データをじっと眺めていたら、なぜ?が生まれる。

沖縄の“工業地価急騰のナゾ”

沖縄県の「工業地価」の推移データ

“太平洋ベルト”を覚えてますか?茨城県から北九州までを結ぶ一連の工業地帯・工業地域を指す国内のグランドデザインに沖縄は含まれておりませんが、それらの工業地帯に肩を並べるほど”沖縄の工業地価”がバブル超えの急騰中です。

夜の工場イメージ/出典:足成夜の工場イメージ/出典:足成

沖縄は新たな観光リゾート構想へ華やかに飛び立とうとしている時に”沖縄の工業”と聞くとみなさんは何を思い浮かべるでしょうか?電気・ガス等のインフラを除けば、沖縄らしい先進工業にバイオエタノールとかオリオンビールも入りますかね。

工業と言えばこれまで貿易や産業発展を支える重要産業の1つで、果たしてそれが沖縄移住生活に身近なのか?と言えば、工業製品が街中に溢れていても生活の中ではそれほど意識しないと思います。ただ大規模な工場集積地は多大な労働力需要を沸き起こす基点になり、愛知県豊田市のように工業が街そのものを形成場所にお住まいの方ならウェイトはあるかもしれませんが。
沖縄は観光産業が目立つのでより一層工業イメージは薄いですよね。

バブル期を超えた工業地価急騰のナゾ

ところが2013年、地価(工業地)ランキングでは沖縄県“工業地価”が国内4位に跳ね上がり、愛知県の工業地価を抜いてバブル崩壊後の1992年県内水準も大きく上回りました。ついに沖縄の工業発展の時が来た?それにしてもこれは一体何が起きたのでしょうか。

沖縄地価(工業地)グラフを日本の経済ネタ帳サイトより取得したのでご覧ください。

地価(工業地)の推移 - 日本経済のネタ帳

グラフの右上にはみ出しそうな勢いの上昇線は、1平方メートル当たりの土地価が66,600円(前年比+9%)である事を示し、愛知県は57,200円の横ばいでいかにその水準が高いか解ります。

それにしても、沖縄県内の雇用情勢は依然として不安定で完全失業率5.7%は北海道から1.1ポイント引き離したワースト1位です。さらに県内地価全体はバブル以降から21年連続下落を続けており、観光産業と宅地需要増のお陰で減少幅が少なくなったばかりです。

このような状況から工業地価高騰要因が雇用環境改善やその他地価上昇に即影響を与えている訳では無いようですが、工業地価急騰を及ぼす高い需要喚起や大型生産拠点の県内転入、あるいは大規模な企業誘致に成功でもしない限り(意外と失敗している)、他県を押し退いての急騰振りは考え難いです。もしや軍用地移転に絡んでいたり、観光業のような陽の目を見ずして、着実に成長して来ていたならと期待感は勝手に膨らみます。

工業地価高騰は数字のチャンプルーが原因

数々の期待や憶測を尻目に現れて来た事情が3つありました。
まず、第一に県内の工業地点は3地点から集計されるため、沖縄県全体の工業地をカバーした数字では無いこと。第二にその3地点のうち“2地点が下落”しているにも関わらず、唯一上昇した1地点の上昇が破格的に大きいために平均を押し上げすぎた!?ようです。
その押し上げた工業地とは「ズバリ糸満(いとまん)」(糸満工業団地)でした。

糸満市街風景/出典:糸満市商工観光課糸満市街風景/出典:糸満市商工観光課

最後の点は糸満市に起因している話ですが、かつて南部糸満方面に向かう主要道路は、331号線で糸満市街を抜けていく道だったかと思います。例えば空港付近のレンタカーを借りて南部方面に向かうなら、間違いなくこの331号線で南部に向かう設定が選択されるという幹線道路でした。
ところが、最近になって那覇西海岸道路の整備が進み、331号線は元来の市街路線に戻りつつあって市民導線に利用され、代わってバイパスとして那覇都心部や那覇空港から豊見城の西を抜けて糸満市街まで縦貫するこの西道路(那覇空港からひめゆりの塔までおよそ30分ぐらい)が地価高騰を招いたようです。

どういう事かというと、沖縄県不動産鑑定士協会からの引用に答えがありました。

沖縄県の地価動向 大企業の製造業が無い沖縄県において純粋な工業地はなく、工業地、流通業務地、商業地が混在した地域が多く、安い労働力を求め国外移転が進み空洞化が見られる他府県の工業地と変動状況が異なっていることにあります。

という事はつまり、沖縄の工業地は、近年盛んな商業や流通と混在しているために、純粋な工業のみで地価上昇をもたらした訳では無く、言わば地域チャンプルー!?による付加価値によって土地価上昇したと見られています。
この為、糸満工業団地の土地価急騰がそうした数字に影響を及ぼしたものでした。

南部の水産加工の街「糸満」

糸満市は、本島南端にある人口58,366人(2014年1月推計)の水産加工の街。沿岸部糸満地区では「サバニ」と呼ばれるくり舟に乗り南洋各地へ出漁したという糸満漁民が有名で、内陸部では畑作を中心とした農業や畜産も盛んです。観光客に人気な有名カフェも多くわざわざ足を運んで行くこともあります。今では人口増加中の都市化が著しく沖縄移住者も増えてきている地域のようです。1982年には大型船用の糸満漁港が完成し水産加工工場や商工業も発達しています。

戦争の爪あとも色濃く残っている“ゆめゆりの塔”や“平和記念公園”の他、琉球ガラスの伝統工芸や糸満綱引き、「糸満ハーリー」と言われる旧暦5月4日(5月下旬~6月頃)に行われる伝統行事が今でも開催されます。

糸満ハーレー/出典:糸満市商工観光課糸満ハーレー/出典:糸満市商工観光課 旧正月風景(糸満漁港)/出典:糸満市商工観光課旧正月風景(糸満漁港)/出典:糸満市商工観光課

那覇空港拡張工事も始まり、開港すれば空からのアクセスが増加して基幹産業の観光業が牽引役となり、それに相まって商業や工業(今回は工業用地でしたが・・)、そして宅地需要の増加まで見込まれ、こうした沖縄県内の各地との幹線道路(輸送ルート)整備がもたらす結果として、伝統の街、糸満の発展的指標がここまで現れたようですね。
沖縄の都市化を嫌う人もいると思いますが、糸満の自然と古き街を残しながら発展するのなら歓迎しても良さそうです。冒頭のグラフにある上昇率はさすがに誤解されそうですが、フタを開てみると、大阪国際(伊丹)空港周辺の企業誘致策のような那覇空港周辺整備の影響と、そして伝統的街の発展形成がチャンプルーした今回の結果でした。

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